「電話って嫌いじゃないな」と、紫龍が云った。

ソファの上で本を読んでいた氷河の視線がちょっとだけこっちを向く。

紫龍の部屋。いつが始まりだか忘れてしまったが、

いつのまに目に馴染んで、あっという間にそこにいるのが

当たり前になってしまった氷河。

置き忘れて枯れてしまった生花のドライフラワーように、

もう捨てるのを諦めてしまった。彼の方を見ないで紫龍は話しを始める。

「普通、会話している時って目を見て話すだろう。

まあ、目を見ないときもあるけど大体側にいるだろう。

雰囲気とかって伝わるけど電話はそうじゃない。

言葉と声と吐息、それしか伝える術がないから、………好き」

顔が見えないから話しやすいなんて嘘。

だって、表情が見えない分、相手が何を思っているか半分しか判らない。

その不白由と不安。だから、その分、人は一生懸命になる。


―――キズイテナイカモシレナイケド。


いつだったか、聖域から帰ってきた氷河が空港から電話を掛けてきたことがあった。

人々のざわめきをぬって、聞こえてる久しぶりの氷河、貴方の声……。

遠くの貴方を一生懸命のがさいように、全身を硬直させて、もらさないように、

耳に貴方の声だけを集中させるから、黒い箱に通された、

いつもとちょっと違った貴方の声。


―――スコシキレイダカラ。


つぶやきも微かな吐息も、全部、全部、私の物。ダイレクトに脳裏に響く。

こうして会っている時よりも、貴方を感じようと努力する。

「この小さな箱に頼らなければ、心が通じえないっていうのも、

ロマンチックじゃないか?」

おおよそ聖闘士の台詞じゃない。

「………でも、俺はこうして目を見て話しているほうが好きだな」

氷河の顔が不意に紫龍の前に近付いてきた。

「お前の目、綺麗だし……」

ゆつくりと蒼い瞳が大きくなって、

「それにキスしたいと思った時に、すぐできる」

そして、触れ合ったのはほんの一瞬。離れていく唇を目で追いながら、

紫龍は必死で抗議を送る。

「………、お前だったら『ちょっと、まってろ』って、『エリーゼのために』か

『羽生の宿』がピコピコ流れる間に、こっちにやってくるだろうが………」

「そうだな」ポーカーフェイスに、反省の色はない。かけらもない。

「………」いつものことだけど。

「怒ったか?」

両の手で顔を押さえられ、視線向けさせられて、口付け。

今度は長い。舌がゆっくり侵入してきた。

「うんっ、んん………」

 瞳を白黒させる紫龍におかまいなしに、氷河が白分を翻弄する。

体が音を発てて氷河の元に沈んでいった。

「怒ったか?」と、仰臥している紫龍の長い髪を撫でながら、

時に指に絡ませ玩ぶ氷河に、紫龍は相変わらずの答えを返した。

「あきれただけだ!」強情な奴だと思う。

「糸電話なら付き合うぞ」

「………」じと目を送る紫龍の唇が不意に捉えられる。白い糸が自然に

重力に引かれるように、紫龍の頬に美しい朱が差し込んでいく。

「やっぱり、目と目を合わせていた方がいいだろう」

にやつく氷河に紫龍はにっこり笑って、キスを返した。

「そうだな」そして、平手を頭に。ぱしつと。

「殴りたい時に殴られる」

「………」


もしかしなくても、ENDOLESS・HAPPYという奴かもしれない……。

        これもチラシから。今と大差ないような気がしますが、
        今、書くんだったら、ラストは「おやおい」に持っていって
        ますね。(^▽^ケケケ

        人として、それでいいのかというのは又、別問題です。

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