「ねえ、さあ、何で紫龍は氷河と結婚してるのさ?」

娘が嫁ぐ日までを丹念に綴った、その美しい日本映画のビデオが、

未亡人である娘の母親の微笑みで幕を閉じた後、

唐突に星矢が言った。

「愛してるから」真顔で言い切る氷河をしばき倒し、

漸く動揺から立直った紫龍がにっこり末弟に微笑みかける。

「どうした星矢。又、いきなり」

「いや、別にいきなりって理由じゃないんだよ」

ぱりんと、映画の最中は気を使っていた草加煎餅を元気良くかじる。

「たださ、美栄子さんがさ」

ちなみに、この美栄子さんというのは、三人いた『親衛隊』を

最終的に四人に増やしたヒロインの母親の未亡人のことである。

「のんちゃんに言うじゃん。

お父さんの代わりなんて、三人集まらなくては出来る人はいないわって、

例えば氷河がおっちんじゃってさ」

「勝手に殺すな」

「紫龍が未亡人になって一人娘を健気に育てたりするじゃん」

「誰が生むんだ、誰が」

 だから、例えばだって言ってるじゃん、ユーモアだよ、と注釈を付けてから

それでも納得のいかない当人たちを無視して星矢は話しをすすめる。

「でさっ、その娘が大きくなって、俺とか一輝とか瞬にさ、

『わたしのパパってどんな人?』

聞かれた時、俺たちが束になっても適わなかった人なんて、

俺、口が裂けても言えないぜ」

「じゃ、そんな口は裂けてしまえ」

と、体罰にかかる末弟の哀れな断末魔を少女は、

「そうよ、そうよ」と、肯定した。

「どうして、こんな素敵な映画を見た後でそういうネタを振るわけ?」

ネタというのも随分な表現であるが、この際、目をつぶることにする。

何といってもこの女神さまの初めての、まっとうな乙女の怒りなのだから。

「ぼくもあーゆう結婚式上げたいな、とか、

由貴ちゃんみたいなお嫁さん早くほしいなっとか、どうして言えないの?」

「………」

「言って、星矢」お嬢さんはにじりよって少年に詰め寄った。

「お願い」しっかりとその手を握り締め、瞳は獲物をHANASAIAI。

それはもう『お願い』などという可愛いものではなか った。

「言って」

「……ぼくもあーゆう結婚式上げたいな」 

 メチャクチャの棒読みで、真意のほどあったものではないが、

えへっとお嬢さんは満面にブーケよりも大輪のバラを咲かせた。

そして、その鮮やかな表情のまま、

「それで?」と、平然と切り返す。

「どうして、パパとママは結婚したのかな?」

「……沙織さん」紫龍の低い声に少女はペロリと舌をす。

「あら、将来のリハーサルよ」

その必要は、六月に降らない雨よりも確率は少ないはずなのだが、

そんな些細なことは“こどもたち”には関係なかった。

「やっぱり顔?」と、露骨に嬉しそうに聞く沙織に、

「じゃないのは確かでしょう」瞬が断言した。

「だって、僕の方がいいもの」

「うーむ、それを言われると西海白竜王だよな」

「そうよね、我儘者の傍若無人。

プライドは高いんだか低いんだかよく判らないけど、

暖簾に腕押しだし……」

「ちなみに暖簾に腕押しっていうのは、その人の価値観が普通と違うから、

押しても引いても意味がないってことね」

「本当、どこが良かったの?」

三人の視線が一斉に集中する。

紫龍はそしらぬフリで、お茶を啜ることしたがうまくいかなかった。

それは三人の正鵠を得た意見に、反論の余地がなかったからではない。

こんな事を考えてみたのが、実は初めてだったからである。

何がきっかけさえも、もう記憶の彼方だった。

それくらい氷河は自然と紫龍の空気。

 いつのまにか、自らの意志のように、束縛のように、

氷河はそばにいたから。というより、気が付いたら、

うっかり隣に寝ていたなんて言えない。流石に。
 
そんな紫龍の思惑とは別に、三人の瞳は期待に満ち満ちて

────困ったぞっと、共犯者をちらりと見ると涼しげな表情が、

「バカだな、お前」と告げた。

「そういう時は、───大好きだっていいなさい」    
 
   おあとがよろしいようで。

    

「おいしい結婚」という映画を見た後でというお題になっております〜ちなみに主演は
斉藤由貴と唐沢寿明。お母さんは三田圭子。主人公達が理想の結婚式を模索しながら、
段々カップルらしくなっていくというもので、しみじみといい映画です。ちなみにラストは、
ガーデンパーティでした。今から10年前と考えると結構、斬新とはまではいかないけど、
イイトコロを付いているなあと。

しかし、モエポイントというか、真のヒロインは死んだダンナの友達3人、揃って彼女を
敬っている(しかも昔、振られた)所に4人目、息子のやもめの父までくらくらさせる
三田圭子という話があるのですが、ま、それもおいといて。
単なる私の由貴ちゃん、スキスキ、氷河&紫龍ヘンカンヘンカンという話で、
それ以外、何もないですねえ。(^▽^ケケケ

個人的には斉藤由貴さんは恋愛じゃなくて、恋から愛に進む話の方が合っていると思います。
ちゃらちゃらしたものじゃなくて、落ち着いたもの。そんなとこは紫龍に似ているかなあと。
ムリヤリ。(^▽^ケケケだから、UPも控えていたのですが、このところ、さぼり気味だったので、不本意ながら上げてみました。

後、毎度のコトながら、この頃の紫龍って、まだ男らしかったなあと、こんな話しでも。
ちょっと(_ _ )/ハンセイじっと手を見る。ま、なるように、なるだば、ないだば。



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