ある晴れた秋の日。

思わず天に高く手を伸ばしてしまいたくなるような、そんな洗濯日和りの日。
青空にはちきれんばかりの笑顔を振り撒きながら、シャッを干していた瞬が、
そのままの表情で、隣でやはり白いシーツ広げていた紫龍に云った。

「紫龍が兄さんのお嫁さんだっらいいのに」
「へっ?」
 いきなりの会話に紫龍の目が点になった
「ちょっと、瞬………」

そういう言葉は、少なくとも自分に向けるものではないと思う。紫龍のたしなめを予想していたのか、瞬はいつもの素直な調子で云った。

「あっ、ごめんなさい。でも、考えたんだ。兄さんが結婚して、その見知らぬ“お義姉さん"と、こんな風に洗濯干すのかもしれないとか考えると、ちょっと、イヤだなあって。だって、その人はきっといかにも、兄さんの妻の僕のお姉さんとして、僕に笑いかけると思うんです。瞬としてではなく、愛する人の弟として。でも、そんな事されたらきっと腹たてちゃいますよ、僕」

「なぜだ?」

「だって、それって兄さんを愛してるから僕を見てくれるって遠回しに云っているんですよ。押しつけですよ、愛情の。僕や兄さんのこと、何も判らなくても微笑むんです。僕がどんな風に兄さんを想っていたのか知らないで。許せますか、そんなの。

兄弟だけど、ずっと兄弟だけど、兄弟だから、越えられない一線ってあるでしょう。ずっとついていてあげたいけど、そういうのもちょっと無理だし。それだから譲ってあげるのに、それを知らないで笑いかけるんですよ、きっと」

 本当に腹立たしいのであろう。少女めいた優しい顔立ちがぷくっと膨れあがるのを可愛いと思いつつ、年長者としてフォローを入れる。

「しかし、一輝が選んだ女性がそうなるとは限らないだろう」
「でも、そんな風に知らない女の人と気まずい思いするくらいなら、紫龍の方がずっといいって思ったんです」人の話を聞いていない瞬にそれでも紫龍は言ってみる。

「…………、俺は当て馬か、瞬」ちょっとすねた感じの紫龍に瞬はやっと笑顔を見せた。

「そんな事ありませんよ、僕だって誰だっていいって思っているわけじゃないんです。ちゃんと、兄さんに相応しく、美人でしっかりしていて、優しくて、……該当する人物が周りに貴方だけだったから、それだけです。ごめんなさい」

 そこまで云われると何も云えなくなってしまう紫龍である。そのまま残りの洗濯物に手をのばす。そんな風に優しいから、それがちょっぴり腹立たしくて、それがとっても安心できる。

「だって、あの人、男杜会では元気に生きていけると思うけど、日常の細々としたところとか、全然駄目でしょう」
「………」

「決められたことは守らない。当番はすっぽかす。壁作るの名人だし。これじゃあ、戦場で暮らせても、普通の生活は出来ませんよ」
「………まあ、そうだな」と、考えながらも紫龍は同意した。確かにもっともな意見だった。
「でしょ」

 ふっ一と、二人で同時にため息がでてしまった。
それから、二人の間でくすくすと笑いが漏れた。明るい声。瞬が続ける。
「本当に紫龍みたいにしっかりした人がついていてくれると、助かるんですけど……」

 瞬は青空みたいな笑顔で、「ねっ」と、紫龍に笑いかけた。



「って、いわれたんだけど………」
「瞬にか?」
「まあな」

 2人は無言で見つめ合った。ベットの上であった。
「なあ」と、紫龍。
「ん?」
「やっぱり、ぱれてんのかなあ」

「そりゃあ、ぱれてるって」
 そして、もう一度見つめ合った。
「どうする?」
「どうって……」
 まだ、余韻さめやらぬベットの上にもう一度押し倒した。

「まあ、大丈夫だろう」きっばり。一輝は言った。
「あれは俺の弟だから……」誰が思っているより知ってはいる。
本当はずっと強いこと。まぎれもなく、二人は兄弟なのだから……。

「一輝………」口調がたしなめても、体が応えるしまっては意味が無い。
それでも、何となく羨ましく思ってしまった。肌も合わせず、判りあえる二人に。

「お前だけだからな」
熱い口付けとともにもらった言葉は嘘ではないと思う。
「……取り合えず信じてあげましょう」

こういう手合いは甘やかせる、つけあがるから………。
 
 もしかしたら、と紫龍はふと思った。
これはこれで幸せという奴かもしれなかった。



 古い話(西暦も覚えてない)は何より、こっぱずかしさが先に立つのですが、
 いやーもー、恥ずかしいね。
イロイロと。つうか、この人達は誰って感じで。
昔のは氷河の方がまだ、読めます。はい。そんな私が今回更新したのは、
純ちゃんが、「
せめて格好良く描いてみました〜」というように、
まあ、たまにはね。
犬のシリーズは扱い悪いし。
今回、×ん×だし。(イヤ、あのシリーズはイイヒト、少ないけど。しーん)

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