「へっ?」

 半分以上、シュラが何を云っているのか紫龍には判らない。

そんな紫龍の耳元を噛むように、

「だから、こっちの方がおもしろいかなと思って」

「ちょ、ちょっと、シュラっ」と、紫龍が止める間もなかった。

素早い動きでシュラは腰のサッシュに手をやると、するするとそれを解く。

「―――シュラっっ」

「何だ?」綿のパンツは、結構、脱がせやすい。

 そうして、剥出しになった脚にシュラは口笛を吹いた。

「綺麗な足だな」シュラは思ったままを口にして、膝もキスを送った。

その足をそのまま四つんばにさせるので、彼は紫龍の泣きだしそうな顔を知らない。

「……、シュラっ」

「何だ?」

 シュラは覆っていたその薄い布を一気に降ろした。

「可愛いお尻だな、お前」

 その双丘にそっと口付けを寄せ、舌でその割れ目をなぞる。

ぺろぺろと素早くそれを動かした。

「あん」と、紫龍のくぐもった声が聞こえる。

「……シュラ、止めてください」

「お前、もうちっとおもしろいパンツを履けば」

と、今の行為と全く関係ないことを呟くシュラであった。

「Tバックとか、総レースとか、色々あんだろうが」

「……そんなの、あんっ、持ってません。ひくっ」

「だからって、ムキにならなくても、」

「……あんん」と、シュラの優しい接吻に紫龍が答えた。きゅっと、拳が握られる。

「……シュラっ」体が小刻みに震えるのが判る。

 それから、火照っていく体。真っ白くなっていく頭。段々、何も考えられなってい

く……。ずぶっと、少し弛んだ其処に指が埋めこめられる。

「やだっ」と、紫龍は云った。

 だが、その指は何かを誘うように、上下左右に動かさられる。

それから、気紛のようにもう一本、二本。

「あんっ」と、噛んだ唇から声が漏れる。こんな自分は知らなかった。

もう耐えられなかった。

「止めっ」と、紫龍は啜り泣きながら云った。

「……止めっ、てください、シュラっ」

 その言葉にぴたりとシュラの動きが止まった。

「……シュラ?」紫龍は起き上がってシュラを見る。まだ、息が上がっていた。

「本当に止めてほしいか」

 こくんと紫龍は頷いた。このままではどうにかなってしまいそうだった。

それだけは避けたい。紫龍の目の端に浮かんだ涙を指で拭いながら、男は云った。

「じゃあ代わりに、―――舐めて」

「へっ?」紫龍は少し赤くなって顔で、息を弾ませながらも、明るく聞いてみる。

「あの、何をですか?」

「だから、ナニだよ」

「……」紫龍は少々、顔を赤らめたままシュラの示した位置を見つめる。

「えーと、舐めるだけでいいんですか?」

「うん」

「舐めるって……。普通に、ですか?」

「普通にでいいよ。紫龍」

 それでも、まだ戸惑いを見せる紫龍にシュラの目が細くなる。

「お前、出来ることは何でもしてくれるって、云ったじゃん」

「云いましたけど、それとこれとは……」

「それじゃあ、お前は一度、交わした約束を反故するつもりなのか?

龍座の聖闘士であろう者が」

「―――」

 恨めしそうに唇を噛む紫龍に口付けを送りながら、

「それにな、これって風邪に効くんだぞ」

「えっ?」と、紫龍が目を見張る。

「だって、汗一杯、掻いて、安らかに眠れんじゃん」

 まだ、何だか疑わしそうな紫龍であったが、

「……老師に云っちゃうぞ」

 その言葉にごくっと息を飲むと、そっと、シュラのそれに近付いた。

堅く目をつぶり、先の方に唇をよせ、ぺろっと舌を動かす。

 そうして、了承を得るかのように紫龍はシュラを見上げる。

息を付くために開いた唇は、サクランボのように艶やかである。

 シュラは微笑むと、紫龍の頭を押さえこみ、自分のそれを深く押し込めた。

「ほら、これで舌を動かしてみな」

「―――ふぐっ」異物に邪魔されて、思ったように言葉が出ない。

「ほら、苦しいだろう。やんないといつまでもこうだぞ」紫龍はもう一度、

堅く目をつぶるとキスをするみたいに、ぺろっと舌を動かした。

「それを何度も繰り返してごらん、紫龍」

 云われるままに紫龍は口を動かした。長い髪がぱさりと落ちた。

それにも構わず紫龍はぴちゃぴちゃとっと音を発てる。
 
すっとシュラが紫龍の髪をかき上げると、いつもの真剣な瞳が現われた。

「お前って……」

「はい?」呼ばれて、紫龍が顔を上げる。

その透明な膵液で汚れた口を拭いてやりながら、シュラは感嘆なため息を付く。

「お前っていつでも、真面目だな」

「そうれすか?」

 まだ、それを口に含んでちろちろやってるとは思えない清らかな表情に、

シュラはある種の感動を覚える。そう思った途端、我慢が出来なかった。

「いいか、紫龍?」下半身の暴走はそんなに急には止まらない。

「いくぞ」

「むぐっ」その途端、シュラの熱いそれが口一杯、広がって紫龍はむせかえる。

 けほん、けほんと息を切らせる紫龍は、

「……苦い」と、呟いた。

「悪かった」少し白く汚れた口元を拭いてやる。

 それから、指で軽く顎を上げてやる。

「……悪かったな」

「……」紫龍の言葉はシュラの口内に消えていく。

 いつのまにか、紫龍はシュラの胸のなかにすっぽり収まっていた。

「……シュラっ」切れ切れの声が、すがるように男を呼んだ。

「何だ?」

 何かを云い掛けた唇に、今度は指で塞ぐ。逃げまとう舌を絡めるようにして、遊ぶ。

「はふっ」と、紫龍が大きく息を吐いた。

「……苦しいか?」シュラはその耳にそっと囁き掛ける。

「だったら、もっと気持ち良くしてやるよ」

その少し熱い耳を甘く噛んで、舌でなぞってやる。

「やん」思わず漏れてしまった言葉に、紫龍は慌てて唇を押さえる。

自分の口からこんな甘ったるい声が出るとは思わなかった。

「どうした?」

 いきなり顔を伏せてしまった紫龍を、シュラは慌てて向かせる。

見れば、その顔は朱色に染まっていた。

「……一つ聞いていいか?」

「……はい?」と、返事は素直であったが瞳には微かな警戒と疑念が宿っていた。

「お前、もしかして。初めてか?」

 その言葉に紫龍はそれこそ、真っ赤になって、シュラを見つめる。

瞳には涙が浮かんでいる。

「そうか、そうかと」シュラはその白い涙を舌で拭って、ぎゅっと、

その堅くなった体を抱き締める。

「初めて……。いい響きだよな」と、シュラはするりと紫龍の肌に忍びこむ。

ざわりと肌が粟立つた。

「本当だ」そのどきどきと早鐘を打つ部分にシュラは、そっと手のひらをのせる。

「まるで、ノックしてるみたいだな」

「……シュラあ」と、紫龍の甘い声が糸を引く。その後は妖しい息の羅列が聞こえた。

「早く、扉を開けてくださいって、懇願しているようだな」

「あんっ」突然、早く撫でられたそれに、紫龍はびくっと体を堅くする。

なのに、一瞬先には体が弛緩していくのが判った。何だかシュラの中に溶けて

いきそうで。最後の術のように、紫龍はシュラの肩に手を回す。

「……シュラっっ。あnn」少し媚を含んだ声。

「何だ?」

 紫龍の白い肌を滑らせる指を止めないで、男は耳に熱い吐息を吹き込む。

「……もう、いや…、あUn」

「んじゃあ、大丈夫だな」

 シュラはそう決心すると、紫龍の両の手をひっぺがして、後向きに座らせる。

「……シュラ」紫龍は何が行なわれるか判らない。ただ、縋るものを無くしてしまった

不安だけが、紫龍を孤独にする。

「大丈夫だ」全てを見透かしたように、男は抱き寄せる腕を強くする。

それでも、まだ、何だか疑わしそうな紫龍にシュラは囁く。

「それとも、恐いか?」

「えっ?」ずぷっ。問い返す間もなかった。ぐいっと体の中に何かが侵入した。

「―――ひゃ」その痛みに紫龍は思わず悲鳴を上げた。

「大丈夫」子守歌のように、男の低い声が繰り返される。

「お風呂に入るように、ゆっくりと沈んでいけばいいんだから」

「……んぐっ」

「ほら、息をゆっくり吐いて、力を抜くんだ、いい子だな」

 そんなコトを云われても、全神経がそこに集中しているのだ。意識を保つのが

精一杯なのだ。ぽたぽたと本当の涙が後から後から零れ落ちていく。痛かった。

体が引き千切れそうになる。

「大丈夫だ、ちゃんと支えてやるから」

「―――痛い」

「大丈夫だよ」シュラはぎゅっと紫龍を抱きしめる。

「こうやって俺が押さえていてやるから」

 そう云いながら、子供でもあやすようにシュラはゆっくり紫龍の体を動かした。

「…やだっ」と、紫龍は子供のように懇願した。

「止めて下さい、シュラっ」

「やだじゃなくて気持ちいいだろうが」と、シュラは云った。

「ちゃんと、俺が全部、中にいるのが判るだろう」

 紫龍は答えられなかった。ただ、空気を求めるように、ぱくぱくと口を開ける。

両目からぽろぽろと滝のような雫が止まらない。

「……いやぁ」

「大丈夫だって―――」そう云うとシュラは最後の力を振り絞る。

「―――あっ、やあんっ」と、悲鳴を残して紫龍は果てた。



 そんなこんなで、シュラの風邪は治った。


「大丈夫か?」

 ぜーぜーと、普段なら意地でも、大丈夫の言葉が出てくるのだが、

今日ばかりはさすがにそうゆう理由にはいかない。

 下半身はじんじんと云うコトを聞いてくれず、おまけに、

「……体温計、振り切ってるぞ」と、昨日の自分は棚に上げて、冷静なシュラである。

紫龍は少し、恨めしそうに彼を見る。もちろん、青銅のそんな視線にびくつく黄金聖

闘士戦士ではない。

「ほら」と、荒い息を繰り返す紫龍の口に白い固体を放りこんだと思うと、

そのまま口を塞ぐ。シュラの冷たい水が流れこんでくる。紫龍はうっとりと、

瞳を閉じる。その目蓋に口付けを1つして、

「とにかく、このまま良く眠ることだな。大丈夫だ、

女神にはちゃんと連絡しておいたから」

「……すいません」

 とりあえず、やっとこれだけが云って、紫龍はもう一度、目を暝る。

とにかく頭がくらくらする。これ以上は何も出来ない。

 それこそ、ミイラ取りがミイラになるだが、この場は好意に甘えた方がいいだろう。

先程着替えさせてもらったせいか、新しいパジャマが気持ちいい。

「なあ」そうやって眠りに就こうとする紫龍に、シュラがとびっきりに微笑んだ。

「風邪の究極の治し方って、知っているか、紫龍?」

 知らない。もとより紫龍はそんなことを答えられる状態ではない。

「他人にうつすことなんだとよ」と、いっそ笑顔でシュラは答えた。

「まあ。安心しろや、紫龍」前髪をかき上げて、男は優しいキスを額に残す。

「治るまでちゃんと、面倒みてやるから」






劇終








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