朝、氷河がもそもそと動き出しているにも関わらず、紫龍はぐっすり眠っている。と、いうシツエーションは是までに3度はあるが、やはり珍しかったので、氷河は着替えるのも忘れて紫龍を見入った。

世界の平和と云われてもぴんと来ないが、何の憂いもなく眠る紫龍こそが守るべきモノだと、容易に理解できた。
愛おしい。その無邪気な寝顔に胸が一杯になる。そして、その確かな存在を確かめたくて、ぷにと頬を押してみる。うん、とちょっと身じろいだが、目覚める気配はない。もう一度、つついても同じだった。夕べはよほど疲れたのか眠りは深い。

ああと、氷河の口から溜息が漏れた。体に巻き付いている白いタオルケットが羽根のように見える紫龍は自分だけのガーディアンエンジェル。愛しさを込めて頬に口付けして、氷河はハッと気が付いた。もしかしたら、今こそが千載一遇の神が与えた好機だということに。
 
じつわ。氷河は紫龍の裸を見たことが無かった。と、言い切ったら、では体中にべたべた付いているキスマークは何だと怒られるので、敢えて鑑賞という言葉を使おう。戦闘中は気前よく脱いでくれるという話しだが、Hの時にも見せてくれるかというと、その限りではない。一緒に風呂には入っているが、やる方に一生懸命でじっくり見るということにはならないのだ。

鑑賞。
その淫靡な響きと氷河はさせて貰ったことがないのだ。紫龍の生まれたままの姿を思う存分、心のキャンバスに刻み込む神聖な行為。一度、頼み込んだことがあるのだが、すげなく断られた。あれから、一緒に風呂に入ってくれる回数も減ったような気がする。

もちろん、氷河は紫龍に対して無理強いをするつもりは全く無かった。が、紫龍の美しい裸体をこのまま拝め無いのは人生に対する冒涜であるし、尚かつ、証拠になるようなモノを撮らなければバレる確率も低く、そして、紫龍に関しての欲望は際限が無い。もちろん身勝手の三段論法と判っているが、それに追加して紫龍はよく眠っていた。ちょっとやそっとでは、起きそうに無かった。極めつけは、昨日したので、彼は、まさにタオルケット一枚だけであった。
つまりその下は裸・・・・。全ての条件が恐ろしいほどに整っていた。

これがチャンスで無くて、なんなのだろうか。もちろん、なけなしの良心はこの際、目をつむって貰うことにする。
氷河はゴクッと息を呑むと作戦を決行した。

まずは右を向いて眠っている紫龍を仰向けになるように誘導する。それから、絡みついているタオルケットを剥ぎ取る。がばっといきなりコトを起こしてはイケナイ。寝返りを打ったから、取れていくように、少しずつ、少しずつ引っ張っていく。ちょっとずつ、ちょっとずつ、慎重に慎重を重ねて。
 
あー、でも、見えそうで見えないのも良いかも、いやいや、男は初志貫徹をしなくてはいけない。でも、バレたら怒るだろうな、そしたら、朝からコトを致そう等と思考を巡らせていたので、氷河は視線に気が付くのに、随分と時間が掛かった。

じーと、張り付くような、それでいてピュアな視線。ゆっくりと振り返ると、
犬が居た。

氷河と同じ瞳の色のシベリアンハスキー。
命名、ごるびぃBY一輝が。

2週間ほど前に迷子だった所を拾われ、この部屋の一角に居住を構えた子犬は、新たな飼い主を氷河と決めた時と同じように、じっとこちらを見ていた。ほとんど無表情だったが、目には親愛の情を示されている。

「おはようございます」

と、云うようにしっぽが振られるので、

「よお」

と、氷河も返事をする。
それから、一人と一匹は見つめ合った。
氷河は目をそらすきっかけを失って。
ごるびぃはそして、「お散歩に行きたいの」という顔をしている。

散歩といっても城戸邸の広大な庭をのんびり歩くだけだし、ごるびぃは放し飼いにされているので、改まって出かける必要は無い。のだが、やはりごるびぃとしては氷河と一緒に朝の空気を吸いに行きたいらしい。遊んでという顔をしている。

その汚れのない純粋な青い瞳にちょっぴり胸が痛んだが、氷河には、今、どうしてもやらなくてはいけないことがあった。

「ごめんね、お兄ちゃん、忙しいんだ」

(何で?) と、聞かれているような気がしたので、氷河は正直に答えた。

「キレイだろ。もう少しこの寝顔を見ていたいんだ」
(どうして?)
「愛しているから。―――ごるびぃも紫龍のことは好きだろ」
 
他の誰かに見られたら、犬相手に何を力説しているとか、サムすぎるぞとか云われそうだが、氷河は真剣だった。紫龍への愛に関しては一歩も引くつもりのないのだ。 
そして、その想いはごるびぃにも通じたようであった。
(うん。じゃあ、あたしも見るの)

よいしょ。と、ごるびぃはベットの上に乗っかった。少し高い其処もシーツをちょっと引っ張りながら頑張って登って、紫龍を挟んで氷河と向かい合う形になる。
青い瞳が無邪気に氷河を見つめる。

「―――ごるびぃ―――」

もちろん、ごるびーに悪意は無い。ただ、氷河と一緒に遊びたくて、紫龍の側に居たいだけだ。そして、負けるのはいつも氷河だった。だから、彼女を連れてきてしまったのだということを、今更ながら思い出される。

「判った。朝ゴハンやるから、ちょっと待っていろ」
(わーい)
ごるびぃは吠えないが、しっぽは先刻よりも激しく振られている。

良い子に待つごるびーに氷河はキコキコと缶詰を切り、フォークで丁寧に中身をほぐしてやる。
「わん」
「さあ、大人しく食っているんだぞっと」

「氷河!!」

と、これで心おきなく任務を遂行しようとした氷河に、いつもより少し厳しい紫龍の叱責が飛んだ。

「ごるびぃが可愛いのは判るけど、人間より先に餌を上げちゃ駄目だと、いつも云っているだろう。飼い主の云うことを聞かなくなるんだぞ」
「お早う、紫龍」

すっかり着替えている紫龍に朝の挨拶の代わりのキスをして、
氷河はわびを入れた。
「今度から気を付ける」

「ゴハン、美味しかったか、ごるびぃ。さあ、口を拭いて綺麗にしような」
「俺がやろう」
ごるびぃのボロタオルを紫龍から取り上げ、氷河は云った。
「その代わりコーヒーを頼む。そんな気分なんだ」
「珍しいな。何かあったのか?」
「いや。ただイイユメを見ていたんだが、途中で覚めただけだ」
「それはもったいないことをしたな」
何も知らない紫龍が微笑む。

「じゃあ、美味しいコーヒーを煎れておくから、早く降りてくるんだぞ」
「ありがとう。愛しているよ」
と、返事をして用事を済ませるべき犬に傅くと、膝の上にごるびーの足がぽんと置かれた。
それは氷河にはガンバッテねと云っているように思えた。

「ありがとう、ごるびぃ。お前だけだ、判ってくれるのは」
(どういたしまして。だから、ブラッシングもしてね)
「・・・・はいはい」と、犬と戯れる氷河は知らない。


「やあだ。氷河ったら自分のコトも出来ないのにごるびぃの世話しているの?ナマイキねえ。でも、愛情の比重が少しは彼女に移ったから、大分ラクになったでしょう」

「そうでも無いですよ。沙織さん」

煎れたてのコーヒーを手渡しながら、紫龍は笑う。

「あら、相変わらず暴君のなの?」
「そうじゃなくて、どっちかっていうと、俺が氷河が足りない気がして・・・」
「んまあ、ごちそう様ね」


 ・・・そんな会話が台所で交わされていることを、ごるびぃを抱き寄せて、男泣きにむせぶ氷河は知らないでいた。




しなさん曰く、彼女(※このハスキーちゃんはメスらしい)の名前は、『ごるびー・モロゾフ4世』(命名一輝&沙織お嬢)。←何故?!何故なの?(氷河の犬なのに・・・!)▼・?・▼;こういうとこがほんとにツボなんですよね、わたし・・・・
しかし、しなさん。やはり、氷河って動物好きそうですよね(自分も動物みたいだから親近感わいてるのかもしれないけど)。そしてその氷河のお世話をする紫龍も、氷河のことすきなんですよね、エヘッ
あ〜〜〜〜〜〜幸せ〜〜〜〜(※鼻の下の伸びてるコメントですいません)
ほんとにありがとうございましたー!! by純子さん

そーだ、だから命名編を作ったんだ私。
そして、最初は氷河もごるびぃって呼んでましたね。直そうかなと思ったんですが、
まー、青春の記念と云うことでそのままにしておきました。これが最後ですからねえ。
流石に「ごるびー」は直しましたが。(^▽^ケケケ これから全てが始まると思うと、
運命って判らないですね。  
byしなしな
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