ごしゅじんさま達がちょっと長めのお出かけから帰ってくるのは50M先から判る。

でも、ごるびぃモロゾフ4世は未だ動かない。只もぞもぞと身じろぎをする。
20M迄近付いてくると、ごるびぃモロゾフ4世は耳をピンと立てて、目をぱちっと開け、それから、バスケットを抜け出し、玄関に向かい、しっぽを振って待っている。次の瞬間にはもう、大きな扉がぎぎぃと開いて、ぱっと光が射し込む。

「ただいま」

と、声がする。うぉーん、と滅多に上げない雄叫びを上げ、ごるびぃモロゾフ4世は一目散にごしゅじん様の元に駆け寄る。
もちろん、この広い屋敷が彼女だけだったことはない。辰巳を筆頭にメイドさんやら庭師やらと人の出入りが途絶えたことはない。ドックフードだってちゃんと貰えるし、ブラシをしてくれる人も、頭撫でてくれる人も居る。
でも、ごしゅじんさまとごしゅじんさまのご主人様と、そのお兄さまと弟さんと、ごしゅじんさまの女王様と星矢の代わりにならないことを、ごるびぃモロゾフ4世はちゃんと知っている。だから、皆がちゃんと、特にごしゅじんさまが帰ってくると、それまでの聞き分けのイイコから、嬉しくて、ごるびぃモロゾフ4世はいつもよりたくさん甘えたさんになってしまう。

「ゴメンよ、モロゾフ4世」

 ごしゅじんさまは、まず毛むくじゃらの顔に埋めながら、まず謝る。

「淋しかったか?」

「うわん」

 そのたった一声でごしゅじん様は全部、理解してくれる。
いつまでも抱きしめてくれる。
ごしゅじんさまのご主人様が、
「そろそろ中に入ろうか」と、云うまで。ぎゅっとしてくれる。それは淋しさを埋める為でなく、再会の喜びだ。撫でて貰って、ずっと抱きしめてられても、喜びは簡単にすり減ったりしない。でも、まだまだ足らない。だから、ごるびぃモロゾフ4世はごしゅじんさまの後をどこまでもつきまとう。氷河が風呂に入っていれば、そのガラスの扉の前で待っているし、トイレに入ろうとすると、そのドアの隙間から一緒に後を付いてくる。だって、ずっと、ずっと側に居たいから。

そんな風におっぽをぱたぱたしながら、自分の後ろを着いてくる彼女がカワイイから、氷河は時々、気が付かないフリをして廊下を歩いてみる。ずんずんと。ごるびぃモロゾフ4世はトコトコと赤い絨毯の上を歩いていく。氷河が止まると、ぴたりと止まる。振り向く。目が合う。もう逸らせない。

「モロゾフ4世」

と、名前を呼ぶと、彼女はにっかし笑って、氷河の足下にすりよってくる。

「甘えんぼさんだな」

 無事に帰ってきた皆が集う居間で再び抱擁を始めた一人と一匹に、ただ一人冷たい視線を投げかけて男は云う。

「フッ、その男のことをあまり信用しない方がいいぞ、ごるびぃよ」

「何ィ」

「どうせ、その男は紫龍もコレ位素直だったらカワイイのに、ぐらいにしか思ってないのだからな」





「何を云っているんだ、一輝よ」

 だが、次の瞬間、氷河は勝ち誇っていた。能面と云われたその顔に不適な笑みまで浮かべて。

「紫龍とはな、トイレはさておき風呂は一緒だ」

 その返答に、周囲は一瞬の内に、ごるびぃモロゾフ4世を抜かして凍り付いたが、その中で被害が一番大きかった紫龍が持っていた盆を落としそうになるのを、ついで被害が少なかった瞬が立て直す。もちろん一言付け加えるのを忘れずに。

「どうなの、実際は?」

「そんな毎回ってワケじゃないぞ」

 紫龍は慌てて云った。

「3回、いや4回に一回程度だ。それに戦闘の後は絶対に鍵を掛けるから、……氷河だって鍵を壊して迄は入ってこないし」

「……じゃあ、一緒に入りたい時は鍵を開けておくんだ」

「語るに落ちたな、氷河よ」

「なにぃ」

 いや、語ってしまったのは紫龍だって。だが、そんな周囲のツッコミをものともせず、一輝は高らかな笑い声を上げる。

「つまり、氷河の薄汚い×××は紫龍のだから、ごるびぃ、お前は諦めて俺の胸に来いっっっ」

 嗚呼、哀しいかな。炎の男が、氷河以上の粉雪を舞い散らしたことを気が付かないのは円らな瞳で二人を見つめているごるびぃモロゾフ4世と、そして、生粋のシベリア育ち、ダイヤモンドダストの舞い手、真打ちの登場だった。

「だから、どうした、一輝よ、いや、羨ましいのか?」

「なにぃ!!!!」





「フッ、紫龍の×××も俺のものだという現実が」


 流石、元祖シベリア育ちだった。氷雪の使い手。触れる物全てに沈黙を与えるスノーマンは温かな団らんが似合うはずの居間を直ちにツンドラ地帯にしてしまった。そして、ばたんと扉が閉まる音がした。

「えっ?」

気が付いた時には手が届かない距離に居た。お茶の盆を持った紫龍はくるりと踵を返して、この部屋から立ち去っていた。無言で。何が起きたか判らない氷河であったが、星矢と瞬の視線には気が付いた。

「……今のは俺なのか?」
「当たり前でしょ」

と、肯定を叫んだのは、とりあえず捕まっていただけで、元気が余っている少女であった。

「先刻から黙って聞いていれば、何よあなた方。×ん××ん×、×ん×、もう一つおまけに×ん×って何度、繰り返せば気が済むの。清く正しい乙女への配慮が欠けていてよ。そもそも男性生殖器を表現するならもっと婉曲な言い回しや隠語があるでしょ。頭、使ってよ。ぽこ×んとかさ、た×た×とかさ、おをつけてみるとかさ、ち×ぽ×とかさ、イ×モ×とか棹とかモザイクでぼかすとか、トーンで処理するとか、○をいきなりいれるとか、●で隠すとか、切り抜くとかぼかすとか、イロイロあるでしょ。頭、使ってよ。―――嗚呼、でも、食べ物は止めて頂戴ね。当分、食べられなくなるから」

「当分なんですか?」

イヤな所にツッコム瞬に、わーと、乙女は泣き崩れた。

「もう、イヤだわ。こんなデリカシーのない家。帰りたい、私の本当の場所へ。〜嗚ーん、早く白馬の王子様、私を向かいに来ないかしら、私が穢れてしまう、前に〜〜」

と、慟哭する少女に周囲の視線はめっちゃ厳しい。

「えー、又ですか。ってゆうか、今日、帰ってきたばかりでしょうが」

「つうか、一番大きな声で連呼しているのはお前だっちゅうに。ついでに俺、そんなに呼び方があるなんて知らなかったぞ」

「えっ?やだわ、日本の古式ゆかしい常識じゃないの?」

 本日三度目の白く凍れる美しい世界の登場である。又、沙織にとっては2度目のピンチであったが、助けが来ると判っていてギロチンが首に落ちそうになった瞬間より、今の方が危機的状況だった。
なにせ淑女としての資質を問われている。しかも自分に殊更甘い紫龍が居ない。

「ほーおっほほほほ」

とりあえず沙織は笑ってみる。

「確かに私はスイも―――だって、周りはホモばかりだし、カライも―――目を付けた男とは縁がナイし、の噛み分けた大人の女。今更、ら×や、あばれん×ごときでビビリやしないけどね」

「未だ、云う気だよ、このアマはっ」

てゆうか、ホモは一組だけですから、僕らを一括りにしないで下さいっっ」

「だけどね、モロゾフ4世はまだお子ちゃまなのよ、生娘なのよ。嗚呼、それなのに。普段から猥雑な言葉を聞かされた為に、粗雑に育ったら?いいえ、こんないかがわしい言葉に過剰に反応してしまい、最終的には男性不信にでもなったら、どうするのよ?」

 3人のギャラリーは一斉にその視線をごるびぃモロゾフ4世に移した。

「うわん」

 ……。絶妙のタイミングで吠える彼女の愛くるしさに屈したのはいつものようにこの男しかいなかった。

「ごるびぃよ!!すまない、もう少しでお前をこのお嬢の二の舞にする所だった
っっ!」

「―――――――――……、でも、判って貰えて嬉しいわ、一輝」

「そして、ごるびぃ、お前の耳を汚す原因を作ってしまったひょうきちを俺に免じて許してやってくれ」

 そうやってどさくさ紛れにやっと抱擁できた男にいつもだったら、飛んでくる氷のつぶては今日は飛んでこなかった。その理由を賢い犬だけは知っていた。

(モロゾフ4世よ、すまん。一輝にお前を預けなくてはいけない俺を許してくれっっ)

(いーの)

 そう健気に答えるモロゾフ4世を後にして氷河はとりあえず台所に向かった。

「どうした?」

 水場から振り返った紫龍が微笑む。聖闘士なのだ。気配くらい簡単に察知できるし、そろそろとも思っていた。

「お前こそ、どうしたのかなと思って」

 今の段階で謝るのもヘンなので椅子に腰掛けて紫龍の動向を見守ることにする。怒っているようには見えないが調子に乗るのは良くないと、過去の経験が物語っている。

「いや、お茶煎れ直そうと思ってな。冷めちゃっただろ」

「そうだな」

「じゃなくて……」ポットとカップをもう一度、温め直しながら、紫龍は続けた。

「男ばっかりじゃないんだから、表現にはもう少し気を付けろよ」

「嗚呼、そうだな」

 曖昧に返事をしたが考えるのは別の、怒っていなくて良かったではなく、皆の為に手早くお茶の用意をする紫龍の横顔が綺麗だなと見惚れてしまったからだ。

「―――何だ?」と、紫龍がやっと氷河を見やる。

「いや、綺麗だなと思って」

 唐突に云われて、氷河にとってはいつものことだったが、動揺したのか紫龍が温めてあったカップを倒した。

「あつっ」

「莫迦」

 反射的に水場に向かう紫龍の右手を握りしめて、その人差し指を口元に持っていく。

「……氷河」

「なんら?」

「……ケガした訳じゃないから、嘗めてもしょうがないだろ?」

「そうだったな」云われて今度は小宇宙を燃やす。程良い冷気が紫龍の指を包んだ。

「痛くないか?」

「ああ、すまん、大丈夫だ」

 しばらくそうやって、治療を続けて、間近で紫龍を見つめて氷河はようやっと気が付いた。目元がほんのり染まっている。そう云えば、最後にしたのって、いつだっけ?
……、一昨日、いや、ソレより前だ。
 自分が紫龍に触れていないということは、紫龍だって同じ時間が流れていると云うことでもある。だが、
「お前も淋しかったのか?」なんて聞かない方がいいに決まっている。案外と意地っ張りだから、
「そんなはずあるわけないだろ」なんて云われるのがオチだ。だから、こんな時はじっと紫龍を見つめるに限る。視線に気が付いた紫龍が氷河を見上げる。
その何か云いたげな唇を氷河は素早く奪って、ゆっくり重ねる。紫龍の体をぎゅっと抱きしめながら。紫龍はそっと氷河に体を預けながら。二人は一人になっていく。
 ……その時、しゅうしゅうと、ヤカンが音を発てた。

「……ごめん。氷河。離してくれないか」

氷河は微笑む。

「紫龍」

その声だけで心臓が跳ね上がった紫龍の耳許に氷河はそっと囁いた。

「いいか、俺の×××はお前の物なのだから、好きな時に使っていいんだぞ」



 そして、城戸家の人々はようやっと熱い紅茶を飲むことを許された。良い子にお留守番していたごるびぃモロゾフ4世には豆乳を。
だが、其処にいる人々は誰も、氷河の頬に残った赤い跡について聞くことは出来なかった。








しなさんから「ちょっとシベリアにおくのはどうかと」と、もじもじしたメールとともにいただいた、最初の原稿は、「×××」が、ひともじしか伏せ字ではありませんでした。その男らしさにごほっと倒れそうになりながら(しかし爆笑しながら)拝読した純子です。そして、まだ、もじもじしている様子のしなさんに、「すいません、2人姉妹で育った私には、あの表記に耐性がありません」と、恐れ多くも純子、くおんしなさんに初めてだめだしをしてしまいました。「しなさんは弟さんがおられるから、大丈夫かもしれませんが・・・」「ちょっとちょっと、ってゆうか、姉弟を誤解してるわよ純ちゃん!わたしだって、弟と普段あんな会話してるわけじゃないのよー!!!」と、まるで小説の沙織のように必死で弁解しているしなさんに、いつのまにやら編集者気取りのわたしが、「んじゃあ全部伏せ字で。さおりんがいう分には毒がないんだけど、こいつら(※氷河と一輝)が言うと、なまなましすぎなんですよ〜」ということでまとまりました。このように今回はてんやわんやのごるびぃシリーズでした。電話で、「どうしよう、今頃はずかしくなってきちゃった」と結局終始もじもじしているしなさんがちょっと可愛かったです。▼^?^▼ (じゅんこ)

あるサイトマスターの方に、その方がシリーズで挿し絵をお描きになっている小説の続きをもうお持ちになっているのですか、と質問したところ、「はい、草稿」を。草稿……なんちゅう美しい言葉。
よし、んでば私もマネしてみようと(他にあるだろうがよ)今回、ちょっちキワドイシ、(しかし、人の望む方向ではない)お伺いをたててみようと(シベリアノ貴族のトキメキレディ達に相応しくなかったら、逢い引きの森にこっそり飾ろうって思って)朝からはりきってメールした所、「伏せ字なら」と純ちゃんの譲歩。それって、「私の氷原じゃない、
表現の自由は?こうなったら徹底的に闘おう」と、はりきって電話(この頃にはケイタイメールで埒が明かなくなってきた)したら、声に出すのって、すっごく恥ずかしいねと、結局もじこさんになってしまい純ちゃんの思うとおりになってしまいましたが、それでもどうしても譲れなかったのが、沙織の「×ん×」で粘ってこれだけは勝ち取りましたが、結果的には良かったと思います。と、いうのは先程登場したサイトマスターの方に、直した文章をお見せしたところ、沙織が口にしていたのは、ぱぴぷの方だと思っていた云うのです。純ちゃんは「どっちも同じです」と、云ってましたが全然、違います。というのは、私の拘りで小学校の男の子が好んで使う言葉というのが、キーポイントだったからです。小学生はは使ってもは使ってはいけません。意地を通して良かったなあと思いました。

所で、私にこの手の単語の耐性があるとしたら、弟のおかげではなく、キンタという渾名の小学生の時に良く歌われていた歌のせいだと思います。♪
きんたまけるな きんたまけるな きんたまけがおおい 歌っていたのはシミズ君という男の子です。小学生は全くよ。……と、気が付いたら伏せ字な話しかしてねえなあ。……あっ、うちの犬は豆乳が好きです。つうかは犬に牛乳は良くないそうで、、、栄養価がきついとかそんな感じなので、うちは豆乳。しかも豆腐屋からのできたてのほやほやです。それはさておいて、この手の単語に耐性のない方ごめんなさい。でも、私の本の方がなまなましいと思うのだが、その辺りはどうよと純ちゃんにツッコンでみたり〜〜。しまったエンドレス。てゆうかいつもより長い(;´Д`) しな

 
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