「紫龍さん、支配人のお呼びです」と、仲間の瞬の声にそのままテーブルを任すと、
  紫龍は従業員通路を急いだ。支配人からの呼び出し、それは彼からのコールを意
  味していた。

  「お呼びでしょうか?」
  ノックの後に、扉を開けると、そこにいたのは支配人ではなく、やはり彼だった。
  黒い仕立てのいい背広が似合う男。

  彼一人でこのカジノ「聖域」一晩の稼ぎをひねり出すコトも出来る一番の上客。
  悪い癖さえなければね、そう心の中で呟きながら、
  紫龍は愛想笑いで仮面を被る。

  「又、いらしたのですか?」
  「君からのマケを取り戻したくてね」シュラはそうゆうと煙草の火をもみ消した。
  「知りませんよ、全財産を費やしても」

  「ははっ、本望だね」
  そこまで俺が突っ込んだら、お返しに君は何を支払ってくれる?
  綺麗な指で新しい煙草を取り上げる。そして吸い口を紫龍に向ける。

  「・・・お望みのままに」
  煙草を銜え、火を付けて返す。
  「では、スコッチでも貰おうか。それから、フラワーカードで」

  優美な手つきでマドラーをかき回せていた紫龍はさっと表情を変える。
  「お好きですね、フラワーカード」
  「ああ、トランプよりも面白いだろ。そのカード、一枚、一枚、工芸品を見ているようだ」

  「ここで使っているカードは特別ですよ」
  と、紫龍はボードを置くと、札をシャッフルしはじめた。
  「江戸時代の浮世絵師がデザインしたものですって」

   へえ、そうなんだ。知識に、感嘆の声。
  「アナタがお遊びになるモノは、何だって特別なんです」
  カードも部屋も。
  「ディーラーも、かい?」
  どうでしょうか?問いを軽く流し、滑らかな動きで札をラシャの引かれたゲームボードに
  並べて行く。

  一枚、二枚、三枚。準備が出来たトコロで、カードを脇に置く。
  そして喉元のタイに手を掛けて、留め金を外す。
  「慣れて来たじゃないか」

  「この先は別料金になっていますが」
  涼しい微笑みに男はチップに使われている本物の金貨を三枚積み上げる。
  もちろん、男は三枚の金貨で買えるのが、彼のもう一個の釦であると知っている。

  胸元がはだけると、彼のまっすぐな鎖骨の丁度真ん中に、不釣り合いな装飾品が見えた。
  「それは?」
  「アナタが勝ち続ければ、ご覧になれますよ」

  良いだろう。ぱきりと指を鳴らすと、部屋の隅に控えていたオトコが重そうなアルミの
  ケースを運んで来る。
  それを脇のローテーブルに置き、そして一礼をして退出。

  今日はこれひとつで、終らせたいね。そう言い、ばちんと金具を外す。
  中身は先程、テーブルに置いた金貨と同じ金貨が、ぎっちりと帯封を付けたまま詰まってる。
  「先ずはこれで」

  その一束をゲームテーブルに置き、紙の帯封を煙草の火を押し付けて焼き切る。
  「それでは」
  ゲームを始めましょう。
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